物語の100冊
『カブキの日』小林恭二。カブキという世界観でファンタジー。芸能とは何か、破天荒な物語を心行くまで楽しめばいい。
『プラネテス』幸村誠。宇宙で生きる人々の物語。「どうしてひとりにしてくれないんだ」が胸を打つ。
『大長編ドラえもん のび太の魔界大冒険』藤子・F・不二雄。大長編ドラえもんは、私の最初の大冒険だったかもしれない。『日本誕生』くらいまでかなあ、私の子ども時代が帆走したのは。
『魔王』伊坂幸太郎。伊坂幸太郎の最高傑作。誰がなんと言おうと、この兄弟が最も現代を撃つ物語だと思う。
『ハーモニー』伊藤計劃。日本SF史上ベスト10に入るだろう傑作。概念・アイデアがこれでもかと詰め込まれている。
『百年の孤独』ガルシア・マルケス。ご存知マジックリアリズムの代表作で世界文学の代表作ながら、とんでもなく面白いということに初読びっくりした。
『タイタンの妖女』カート・ヴォネガット・ジュニア。太田光氏絶賛。この結末のシニカルなさびしさはやっぱり稀代に残る美しさ。
『1984年』ジョージ・オーウェル。完璧な書物。これだけ古典となっているのには理由がある。
『カードミステリー』ヨースタイン・ゴルデル。「ソフィーの世界」作者のトランプをモチーフにしたファンタジー。私はこの登場人物ジョーカーになりたかった。
『ヤンのいた島』沢村凛。かつて10年以上前に一度だけ読んだだけなのに、心に残っている。ある島のファンタジー。グローバルの悲劇を予見しているすばらしい物語。角川文庫に最近なったはずなのに、どこにもない。
『花男』松本大洋。私の中で、「ピンポン」と僅差でこれが松本大洋ベスト。純粋無垢と権謀術数が陽陰一対で世界を変えるのだが、この作品はその真っ直ぐなどでかさが大好きなのだ。
『魔女』五十嵐大介。五十嵐大介という稀代の漫画家の現在ベスト。モナドロジーや東洋思想につながる「すべてがつながっている」世界理解を絵にする画力は圧巻。「カボチャの冒険」も好き。
『最後の物たちの国で』ポール・オースター。オースターはどれもいいけれど、やはり私はファンタジー好きゆえに、これが忘れられないのであります。「最後の物たちの国」からの手紙。
『さくらんぼの性は』ジャネット・ウィンターソン。17世紀ロンドンに端を発するファンタジー。ドッグ・ウーマンの母性の偉大さがとにかく胸を満たす。
『伝奇集』ボルヘス。こんなに好みど真ん中の小説集も珍しいくらい、にど真ん中。ファンタジーは世界を違和化してひとたび沈思を促す装置なのである。
『見えない都市』イタロ・カルヴィーノ。ど真ん中その2。マルコポールの報告の体裁を借りた、架空都市たちのレポート。優れた、しかも先見性のある都市論、文明論、境界論(=見方論)、しかもその深度、その卓抜性。すごい知性だ。と言うことを考えずともただただとにかく面白いのです。
物語の鳴る音楽100曲
ここに挙げるのは、私にとってのいい曲。私にとってのいい曲は、「それを聴いているとある情景や物語が浮かんでくる」曲。ここにこれから並べる曲は、何度聴いたって、いつだって物語が浮かんでくるのです。
「Love again」globe。私が人生で最も多く聴いている曲。大学2年の春だったけれど確か、今までの人生で聴いてすべての曲のなかで最も私のアイデンティティに近接していると感じた。あまりに近接していてびっくりしたくらいだった。別に何度も何度も恋してるわけでもないけど。無常感とそれでもただ駆けぬける疾走感、最後の変調でほのかに見える祈りのような希望、あえていえばこういう言葉になる。
「アジアの純真」PUFFY。井上陽水と奥田民夫は天才だと思った。多幸感が爆発する奇跡的な一曲。歌詞、曲調、そしてなんといってもタイトル。これほど幸福なアジアを具現化したものが他にかつて、今も、この先ももあるだろうか。「ピュアなハートが 誰かにめぐり合えそうに 流されていく 未来のほうへ」こんな歌詞、誰が書けるってんだ。私にとってはこの曲はSFでもある。
「ロックンロール」くるり。これ聴いたときも、あまりのことに私がつくった曲かと思った(おい)。無常と知りながら、それでも落ち込むでも投げ出すでもやけになるでもなく、それを受け止めて歩いていく。「さよなら また明日 言わなきゃいけないな 言わなきゃいけないな」なんて素晴らしい歌詞だ。これぞロックンロール。
「もくまおう」cocco。沖縄の野人(褒め言葉)coccoの私的最高傑作。寂しくてもひとり誰かを思ってあたたかに歩き出す女性の姿が、いつも思い浮かぶのです。
「F*cking In The Bushes」Oasis。これはもうアグレッシブな映画を私がもし撮るならぜひオープニングテーマにしたい。Oasisのメロディは斬新ではなく、核心だ。先端ではなく、王道だ。常にロイヤルロードを歩み果たしたのだ。
「Life In Technicolor II」coldplay。おそらく2012年に出会った中で最も聴いた曲ではないか。この曲が眼前にもたらす郷愁はなんなのだろうか。われわれのこの現代の生活を、まるではるか遠くの時から腰を下ろして懐かしんでいるような、愛おしさをもよおす。それは言葉にすると「今を愛する」という陳腐な言葉にしかならない、ファンタジーだ。
「GIFT」Mr.children。いつかの夏のオリンピック番組テーマだったけれど、オリンピックソングとして空前絶後の傑作だと思う。これ以上のものはないと思うくらいに。「君に似合う色を探して やさしい名前をつけたなら ほら 一番きれいな色 いま君に送るよ」「もう どんな場所にいても 光を感じれるよ」「君とだから探せたよ 僕のほうこそありがとう」、さすがミスチルと感銘したほどに、メッセージが深く正しい。PVがまたいいんだ。これ、結婚式ソングとしても出色と思うんだけどね。
「on your mark」CHAGE AND ASKA。もちろん宮崎駿の短編も好き。CHAGE AND ASKAの数々の楽曲は、ときどき、忘れた頃にふと聴くと、いつも変わらぬその場所にあって力強く鳴っている。つまり、たかが10年20年という時代に押し流れるようなヤワでなく、骨太なのだろうと、改めて思う。